辣油の四方山記

現代を生きる若造の主に読書記録。その他の事も書くかもしれない。

#11 『故郷』感想

f:id:sykykhgou:20160330093128j:image魯迅阿Q正伝狂人日記』 岩波文庫

これは非常に有名な作品ではないでしょうか。魯迅「故郷」です。まず中学校の教科書に載っていると思いますが、当時は読んでも何も思いませんでしたね。最後の部分も意味ありげだということしか分からない。そんな感じでしたが先程読んでやっと意味を理解することができました。そもそもこの作品を読むに当たっては確実に多少の儒教知識と魯迅の持つ考えを知っていなければ理解出来ないはずなのに何故中学過程の教科書に載せるのか。地上に道はない、人が通らなければ道にはならない、とかペーペーのガキに分かるはずがありませんよね。私もペーペーのガキだったわけです。

やはりこの作品にも魯迅の根底、"儒教社会あるいは古き中国への反発"がある訳ですよね。最後の部分や豆腐屋の楊おばさんなどの描写を見ても完全に悪意しかない、といった感じを受けます。自分が幼い頃居た故郷へは憧れよりも失望の方が大きいでしょう。昔は思想とかそんなものは無くてただ無邪気なだけだったから閏土とも隔てを感じなかったが今は大人になってしまい様々な隔て、壁を感じるようになってしまった。またそれは身分的な隔てだけではなく、香炉や燭台といった、魯迅儒教の遺構としか捉えないようなものにも表れており、ますます失望を加速させていることが分かります。近所の人も売ろうと思っていた家財道具を勝手に持っていってしまう、というのもあり憎いという感情も大きいのではないかと思っていたのですが、ここは感覚の差か作中の魯迅にそこまでの激しさは見受けられませんでした。しかし描かれ方が酷いなぁ…。
人が通らなければ道ができない、というのは儒教に疑問を抱く人間が多くならなければこれからの中国の進むべき道はない、と古臭い習慣に覆われた息苦しい自分の故郷を見て感じたのでしょう。