松風の四方山記

現代を生きる若造の主に読書記録。その他の事も書くかもしれない。

#28 「やし酒のみ」感想

エイモス・チュツオーラ『やし酒のみ』 岩波文庫

今回は私が恋い焦がれて3世紀、念願のアフリカ幻想文学という超マイナー分野、エイモス・チュツオーラの作品、「やし酒飲み」です。一部の人からするとマイナーでもなんでもないのかも。しかし設定からもう好きなんですよ。やし酒大好きのアル中が、死んだやし酒作りの名人をあの世から取り返すためにあの世まで旅するというとてもユーモラスなもの。憎めませんよね。序盤から死神を捕まえたり結婚したり色々ありますけど、正直言って話の展開の仕方が一様になってしまっている気がする。西アフリカの呪文、呪術の呼び名で「ジュジュ(juju)」というのがあるんですが、この物語ではこのジュジュのせいでデウス・エクス・マキナになっている。自分はこの物語の情景を楽しんでいますが、正直何を楽しめばいいのかも分からない。しばしば出てくる奇妙な生き物に対して策を練るかジュジュを使うかして切り抜ける、これの繰り返しが多すぎる。日本語でたった200ページの本なのにもう読むのがつらくなってくる。元々日本語で書かれた文章ならば言い回しや言葉の持つ美しさなど楽しめる箇所は多くありますが、この作品は元々英語で書かれているらしいので英語で読むのが一番なんでしょうかね。ナイジェリア人作家が英語で書くという作業も一種のクレオール化でしょう。しかし詩人のディラン・トーマスはこの英語を「簡潔、凝縮、不気味かつ魅力的」と評しているらしいので捉え方は人それぞれですね。あとがきを読んだ感じチュツオーラは相当な苦学の人なんですね。学校に通いたくても主人に仕えなければならない、学費を出してくれていた唯一の人、父もすぐに亡くなってしまう。本当に聞いているだけで凄い。感想が尽きたので今回はこの辺でさようなら。