辣油の読書記録

現代を生きる若造の主に読書記録。その他の事も書くかもしれない。

#48 『西部開拓史』を読んだ

猿谷要『西部開拓史』(岩波新書)

映画"once upon a time in…Hollywood"に西部劇(タランティーノが広めたマカロニ・ウェスタンも含めて)が出てきたりジョジョ7部SBRが西部開拓をストーリーとしていたりするのでこの本を読みました。なんとも浅はか。今年の3月に見事な復刊を遂げたため購入。

1804年、フランスから購入したルイジアナアメリカ国旗が掲揚されるのであるが、開拓という開拓はメリウェザー・ルイスとウィリアム・クラークによる探検から始まると言えるのではないだろうか。彼らの探検隊は総勢45人でミズーリ川を船を引きながら遡るという、我々が想像する「探検」とは随分異なる質素なものであり、それでも尚多くのトラブルがあったものの何とか成功を収めた。これが西部開拓の起こりとなる。ここから僅か30年足らずで西部には鉄道が走り始め、1861年南北戦争を挟んで1869年に最初の大陸横断鉄道が完成することとなる。1848年にカリフォルニアで金鉱が発見されると大変な混乱が起き一躍ゴールドラッシュが起こる。1ヶ月働いて7ドルを稼ぐという当時、金鉱では1日に200ドル、300ドルと稼ぐ者がいる。言葉通りの一攫千金の世界。人の心は狂わずにはいられない。このゴールドラッシュはアメリカ人以外の運命も左右した。1850年にはジョン万次郎が日本への渡航費を稼ぐために金鉱へ入り2ヶ月で600ドルを稼いですぐにサンフランシスコへ戻っている。その後は南米を迂回する航路を取って日本へ帰国する。ジョン万次郎が金鉱に入った翌年1851年にはハインリッヒ・シュリーマンが仲買業者として手腕を発揮し9ヶ月に90万ドルを稼いだ。これが後々トロイ遺跡発掘の資金となる。ほとんど運命のいたずらに近いとすら感じる。

1865年に南北戦争終結すると数年後にカウ・タウンができ始める。これがカウボーイの町であり、よく西部劇で目にするテンガロンハットに拍車のついたブーツというあの出で立ちの男がそこらを歩いている。例の光景、見慣れた光景、容易に想像ができる。

個人の欲望を無理に押し通そうとする者は、いつの時代にも、どんな場所にも、絶えることはなかった。とくに西部ではそれが、法による秩序がうちたてられるまでのかなり長い間、暴力の横行という形になって現れる。多くのガンマンたちが、そのため今なお名前を歴史のなかにとどめることになった。(p.176)

もうこの頃には西部への白人の入植が相当進んでおり、この後の西部開拓は開拓というよりもインディアンへの抑圧という方が正しい。ドーズ法という「インディアンのためのホームステッド法」とは名ばかりの荒れ地のみをインディアンへ割譲する法律が作られもしたが、白人はこれに対しても不平等であると唱え、果てには自分達がインディアンを押し込めていたオクラホマを「解放」せよとの声も上がる。著者も述べている通り、「自由の国」にしては随分とレイシズムの蔓延った世界であり現実がそう甘くはないことを表している。酷い乱文だがこれで終わりとする。