辣油の四方山記

現代を生きる若造の主に読書記録。その他の事も書くかもしれない。

#30 『英語達人列伝』感想

斎藤兆史『英語達人列伝』 中公新書

どうもどうも。思ったんですけど、本が好きな人って何日に1冊のペースで読めるんですかね?まあこんな疑問は日に3度くらい考えますけど、高校時代、友人の担任が週に3,4冊のペースで読むべきだと言っていたらしいのですが、普通にのほほんと暮らしている社会人では絶対不可能ですよね。自分だったら常に読書欲に渇望していなければ無理です。今日3月5日、色々ネットサーフィンしながら読みたい本をメモしていったら27冊になりました。いい加減にしてくれ、1日にせいぜい新書か短編小説1冊程度しか読めない自分がたった1日で24冊の本をメモしている。いつになったら終わるんだ。しかし毎月毎月、岩波書店講談社も筑摩もみすず書房中央公論新社もよくここまで面白そうな本を出版してくれてますよね。特に中公新書。今回の「英語達人列伝」も中公新書ですが、誰か偉い人が言ってましたよ。「中公新書は数十年後、確実に名著となる本を出して攻めまくっている」と。そうなんですかね?自分はエロくないので詳しいことは分かりませんが、確かに書店の中公新書棚を見ると垂涎。気づいたら床に涎と我慢汁がダラダラ。中公新書の表紙は深緑色なので白濁液を掛けちゃったらバレちゃうね❤行きつけの所の書店員さん、ごめんなさいね★

ということで今回も以前から目を付けていた本です。最近自分の英語力を上げたいと思っているんですが思ってるだけで行動には移してない。著者は斎藤兆史氏という日本の英米文学者で、現在は東大教養学部の教授をやっておられるんですね。立派な方だ…。この本は本当に面白くて、誰でも一度は聞いたことのある人物を卓越した英語力、英語遍歴の切り口から探っていくというもの。日本美術の復興に尽力した岡倉天心終戦時日本においてアメリカ人から「従順ならざる唯一の日本人」と言われた白洲次郎などの逸話、経歴が書かれている。その中に紹介されている10人の達人の内、西脇順三郎の項でイスラム学者井筒俊彦氏に関する記述を見つけました。井筒俊彦氏といえばピンと来る人がいると思います。岩波文庫から出ているコーランは全てこの人の執筆です。岩波以外にもイスラム関係の本で名前を見たことがあります。自分はまだ井筒氏の著作を読んでいませんが、この方も大変な英語話者であったそうですね。拙いながらも単語同士がつながったのは嬉しいことです。

この本を読んで、自分は真に反省しなければならない、と思いました。今までの自分の英語勉強が如何に浅はかで愚かなものであったのかを思い知った。自分にはこの本に書かれているような達人になる資質はありません。にしても自分は腑抜けが過ぎる。ウトウトしてる時にビンタされた感じ。歴史の教科書に載るような人がどのように血の滲むような努力(尤も、本人達は努力と認識していないだろうが)をしてきたのか良く分かった。しかもここに書かれているのは英語に関してのみ。本当に尊敬します。

個人的には幣原喜重郎の話が一番グッときました。この項の冒頭に書かれていた著者斎藤先生の一節を引用したい。 

仮に自分の属している共同体の運命が自分の英語力に懸かっていると考えてみていただきたい。その重圧に耐えられるだけの英語力を持っている人間がどのくらいいるだろうか。 

日本史を習ったことのある人なら誰でも知っている幣原喜重郎、戦前戦後日本の外交、命運をその背に負っていたと言っても過言ではない。「協調外交」を掲げた彼は、戦前、幣原自身が必死に守ろうとした国内からも「軟弱外交」と非難された。結局彼のその働きの甲斐虚しく、日本は戦争の道を進んでしまったが、その後始末までもが彼の外交手腕、ひいては英語力に懸かっていたことを考えると教科書に載っている彼の名前も輝いて見える。これは若気の至りであるが、自分は高校時代軍歌を流しながら戦前日本史の勉強をしていた。その時何度幣原に舌打ちしたことか、よく覚えている。しかしこの本を読んで、歴史の中の幣原喜重郎と個人としての幣原喜重郎とでは全く異なって感じることができる。

幣原の項が特に気に入ったので沢山書きましたが全て良かったです。中公新書、侮れない。