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辣油の四方山記

現代を生きる若造の主に読書記録。その他の事も書くかもしれない。

#17 「文字禍」感想

読書感想文

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中島敦山月記・李陵』 岩波文庫

今回は中島敦の文字禍です。私がこの作品と初めて出会ったのは確か京都大学の過去問だったように思います。高校の時に授業で解かされたのですが、正直、文章と内容に呑まれてしまい問題どころではありませんでした。出会ってからずっと全編を読みたいと思っており、青空文庫で何回か読みもしましたが、今回もまた読んでしまった。

この作品は古代アッシリア王国が場面なのですが、その背景、人物名などあらゆるものの非日常に呑まれていました。現代の日本で普通の生活をしているとなかなか見ない名前ですからね。今も呑まれています。初めて読んだ時は何のことやらさっぱり、という感じだったのですが(過去問を解いているのにそんな状況ではマズいのだがここではあまり触れたくない)、読む度に色々なものが深まっていく気がするんです。アシュル・バニ・アパル王に命じられ、文字の精霊について研究する博学者ナブ・アヘ・エリバは研究していく中である"もの"とそれを指し示す"言葉"の関係に気づく。それは「言葉は物体の影のようなもの」というもの。これは飽くまで文学なので実際の世界の中で考えるのは少しおかしな話かもしれませんが本当によく分かる。文字は、それ自体が指し示す物体の本質を見失わせるということを猟師などの例えを使って言い表している。書物狂の博学な老人もあらゆる言葉を知っているがその実を知らない、このことも先に述べたものの一つであろう。私はまだまだ勉強不足なので中島敦のバックグラウンドについて何も知らないが、彼も文筆家である以上、アッシリア王国を生きるナブ・アヘ・エリバと何か似たような問題、疑問にぶつかったのではないかと思ってしまう。