辣油の四方山記

現代を生きる若造の主に読書記録。その他の事も書くかもしれない。

#4 『二人の稚児』感想

f:id:sykykhgou:20160314163626j:image谷崎潤一郎『刺青・秘密』 新潮文庫

今回も同じ本から「二人の稚児」という作品です。この作品は自分にはそこまで響きませんでした。恐らく自分が、心に響くだけの器ではないからでしょう。まず第一にこの作品の要がどこにあるのか全く知ることができない。美しい情景の描写というよりかは、人間が誘惑に呑まれていく様をある種滑稽に描いているように思います。こう書くと兄千住丸の姿がありありと浮かぶようですが私はそれだけでは済まさない。千住丸が淫蕩に溺れていく様を比叡の中から侮蔑しつつもやはりその心を捨てきれない瑠璃光丸。確かにこれは仏道から見た煩悩の最たるものであろう。最終的に瑠璃光丸は屈強な精神力、仏道に忠実であろうとする心によって比叡山内に止まり、物語を書き終えた後も高名は僧になるということは想像がつく。瑠璃光丸はその歳の若さ故か煩悩を断ち切る為に千住丸を見下し、「血は争えない」という言葉を胸に兄を見下すが、これも煩悩だということに本人は気づかない。仏道修行とはいえ人を見下すことで得る優越感は良いはずがない。煩悩にまみれている自分でもその位は分かる。しかもこの葛藤の根源にある「見たこともない比叡の外の女」の存在が最後までに瑠璃光を惑わしていることも分かります。それは何故というと最後の部分、夢で告げられた「前世でお前の事を好いていた女が鳥に姿を変えて比叡山の山頂で傷を負っている」という瑠璃光の惑いの根源にある女の存在がとうとう仏道に混じって出てきている。全く面白すぎる。ここを読んでいる時声を出して笑いましたよ。どれだけ女のことが気になっているんだ。お前も比叡山を降りて淫蕩に耽る日々を送ってもいいじゃないか、って感じですね。淫蕩からのファーストコンタクトにギリギリ耐えるもやはり我慢できなかった童貞の話だったのでしょうきっと。自分にはまだこの作品は早すぎた。